以下の記事は、目ざめよ!1981年12月8日号「うつ病と闘う方法」からの抜粋です。
うつ病と闘う方法
「うつ病の人すべてに運動をさせることさえできれば,そのうちの4分の3は気分が高揚することに気づくであろう」と,ディメリ精神療法センターのアルマンド・ディメリは語っています。重症うつ病ではなく,人が"憂うつな気分"になっている場合については,この意見に同意する人もいます。十分の休息や睡眠も肝要です。
軽度のうつ病患者の中には,自分が特に楽しめる活動に幾らかの時間を取っておくことでよくなる人もいます。洋裁の大好きな一婦人は,「何かを作っていると,とてもうつ病にはなっていられません」と話しています。必要なのは一晩レストランで食事をするとか短い休暇を取るなどの気分転換だけということもあります。
心の中にあるものを信頼の置ける友人に吐露することは大きな助けになります。(省略)では,憂うつな気分が長く続く場合はどうですか。
食べ物が原因ではありませんか
ご自分の食習慣を注意深く調べてみてください。米国オハイオ州カイヤホーガ・フォールズで主任保護観察官を務めるバーバラ・リード女史は,自分の事務所に送られて来る犯罪者の多くはうつ病の症状を訴える,と「目ざめよ!」誌の編集部員に説明しました。
同女史はその人たちの食習慣を調べてみました。その多くは"栄養価の少ないスナック食品"を食べて生きており,朝食を抜いていました。緑色野菜を食べずに幾週間も過ごす人さえいました。
より良い食習慣―バランスの取れたきちんとした食事―と運動のおかげで,気分が良くなった人は少なくありません。(省略)
食習慣がうつ病の原因になるかどうかについて,権威者たちの意見はまちまちです。最も優れた食物を取っていても,やはりうつ病になる人はいます。食習慣を改善させても,病状のよくならない人もいます。
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人は各々異なり,他の人よりも砂糖やカフェインなどの物質に敏感な人はいるでしょう。しかし,バランスの取れた食事を取り,パイや菓子パン,チョコレート,キャンディー,清涼飲料水などを食べたり飲んだりする際に節度を保つなら,うつ病に悩まされている人には大抵良い結果が様々な形でもたらされるでしょう。
極度のうつ病は身体的な異常の一症状とも考えられるので,精密検査を受けるのも大切です。
正しい考え方をしていますか
うつ病の症例すべてが誤った物の見方から発しているわけではありませんが,最近,10年がかりで行なわれた一研究は,うつ病患者がしばしば状況を誤って解釈することを示しています。
「うつ病に悩む人が悲しい気持ちになり,孤独感を味わうのは,自分は無力でだれからも見放されている,と誤って考えているからである」と,研究者で精神科医のA・T・ベックは説明しています。
聖書も,心でどう感じているかが外部の事柄に対する人の考えに影響を及ぼすことを示して,こう述べています。『艱難者の日はことごとく悪しく心の喜べる[快活な気質を持つ]者は常に酒宴にあり』。人の毎日が『ことごとく悪しく』なるか,『毎日が酒宴のようになる』かは,かなりの程度,当人の心構えにかかっています。―箴 15:15。
ですから,うつ病に悩む人は自分の考えを矯正するよう一生懸命に努力し,何を思い巡らすかに注意を払わねばなりません。そうすることは口で言うよりはるかに難しい場合があります。うつ病患者の多くがよく抱く有害な考えの幾つかがわくの中に挙げられています。(※最後に掲載します。)
そのいずれも正しくありません。こうした考えが脳裏に浮かんだら,すぐにそれを消し去るようにします。そうした事柄を思い巡らしているなら,自尊心が損なわれ,うつ病がひどくなるでしょう。
(省略)
物事を成し遂げることの価値
征服罪悪感
夫に先立たれて悲嘆に暮れ,その上,自分の家を修繕してくれるという人の約束が果たされないために失望していた一未亡人は,ひどいうつ病になってしまいました。しかしそれから,『修理はそれほど難しくないはずだわ』と考え,一生懸命に働き,間もなく台所の床のタイルを張り替えてしまいました。完ぺきな仕事とは言えませんでしたが,この人は満足感を味わいました。自尊心が高まり,うつ病は跡形もなくなりました。
だれにでもこのようにできるわけではありません。しかし,ある研究論文によると,極度のうつ病患者の中で,ある種の仕事は成し遂げられないと思い込んでいた人が,実際にはうつ病でない人と同じほど立派に仕事を成し遂げています。
うつ病に悩む人が成し遂げることのできる事柄は家事だけに限られていません。人を訪問するか電話を掛けるかして人を励ましたり,家族を喜ばせるために何かしたりするのもよいでしょう。
うつ病に悩むクリスチャンのある婦人は若い女性の所を訪れました。その女性は少し前にひどく殴られ,暴行を受け,刺されていたのです。そのクリスチャンはうつ病でしたが,毎週その女性の所を訪れて,慰めようと懸命に努力しました。その結果,「徐々にでしたが,憂うつな気分を味わわなくなりました。彼女を励まそうとしているうちに,自分の問題を忘れていたのです」とそのクリスチャンは語っています。こうしてこの婦人は,「受けるより与えるほうが幸福である」という,イエスの言葉が真実であることを知ったのです。―使徒 20:35。
神との関係と祈り
重症うつ病に悩む一人の母親はこう告白しました。「引き金を引いてすべてを終わらせることを思い留まらせた唯一のものは,神との関係でした。銃を手にしていましたが,その時エホバ神はそれを離すよう本当に助けてくださいました」。
この婦人は自分が医療に反応する状態になるまで,「普通を越えた」力を得て耐え忍んだのです。聖書研究をし,真の友を見いだせるクリスチャンの集会に出席して真の信仰を培い,その信仰が命を救ったのです。―コリント第二 4:7,8。フィリピ 4:13。
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神が助けてくださる一つの方法は,そのみ言葉,聖書の備えです。それは,家族生活をより良いものにする方法,他の人とうまくやってゆく方法,不安や罪悪感を生む行為を避ける方法,そして人生において有意義な仕事や目標を選ぶ方法などを示しています。こうした情報に従って行動すれば,うつ病の原因となるストレスの高じる数々の状況を除くのに役立つでしょう。―コロサイ 3:5‐14,18‐21。テモテ第一 6:9,10,17‐19。
強い信仰があっても,うつ病患者は神に見捨てられたと感じて,疑いを抱くことがあるかもしれません。しかし,決して祈りをやめてはなりません。
ベッドから起き上がるのがやっとという状態が何か月も続くほどの抑うつ状態に陥っていた一人の母親はこう語りました。「毎日,5回も6回も熱烈に祈り,助けを何度も請い求めました。どこが悪いのかを知っていて助けになってくれる医師を見付ける上で適切な導きを与えてくださるようエホバ神に懇願しました。生き続け,これ以上家族に迷惑をかけないように物事をきちんとできるだけの力を祈り求めました」。
その粘り強さは報われ,適切な医療を受けて重症うつ病から解放されるところまで忍耐できました。
「予防が第一」
「最も大切な助言は,『予防が第一』ということです」と,一人の患者は語りました。でも,どのようにして予防するのですか。簡単な答えも確実な答えもありませんが,一部の権威者たちは次のように提案しています。
1. 愛,金銭,社会的な地位,権力,薬物などの上に自分の価値感を築いてはならない。さもないと,それを失った場合,破滅的な影響を被ることになる。
2. 現実的な期待を抱く。最善を尽くすことを目標にはするが,完全主義者にはならない。
3. 初期の徴候(不安,恐慌状態,集中力の欠如)を識別する。自分の毎日のスケジュールが道理にかなったものかどうか調べる。道理にかなっていなければ調整する。必要な場合には断わることを学ぶ。
しかし,数多くの個人的な圧力に遭いながら,幾百万もの人々は,「優しいあわれみの父またすべての慰めの神」のご意志とお目的とに関する正確な知識を得ることがうつ病を予防する最大の助けの一つであることを知りました。―コリント第二 1:3。
人をうつ病にしやすい考え方
□ 幸福になるためには,どんなことをするにも成功しなければならない。トップに立たなければ,失敗者だ。
□ 幸福になるには,どんなときにも,すべての人に受け入れられねばならない。
□ 人間としての自分の価値は,他の人にどう思われるかにかかっている。
口 愛がなければ生きてゆけない。配偶者(恋人,親,子供)が愛してくれなければ,私には価値がない。
□ 人が自分と意見を異にするということは,その人が私をきらっているという意味だ。
□ 自分は非の打ち所のない友人,親,教師,生徒,配偶者であらねばならない。
□ どんな困難があっても,冷静さを示して耐える力がなければならない。
□ どんな問題に対してもすぐに解決策を見いだせるようでなければならない。
□ 決して悪感情を抱いてはいけない。いつも幸福かつ平静であらねばならない。
□ 疲れたり病気になったりしてはならず,常に最高の能率を保つべきである。
これは,一部,A・T・ベック医博著「認識療法と情緒障害」に基づいている。
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