芸術と物理学
D'ou venons-nous? Que Sommes-nous? Ou allons-nous?
われわれはどこから来たのか、われわれは何者か、われわれはどこに行くのか?
ゴーギャンの大作
Paul Gauguin(1848-1903) D'ou venons-nous? Que Sommes-nous? Ou allons-nous?
この絵はポスト印象派の有名なゴーギャンが、西洋文明から隔絶した楽園を求め、南太平洋の仏領タヒチで描き上げた歴史的大作、
『われわれはどこから来たのか、われわれは何者か、われわれはどこに行くのか?』
です。絵の中には、絵のタイトルに合わせているのでしょうか、よくみると
- 赤ちゃん(われわれはどこから来たのか)
- 大人(われわれは何者か)
- 老婆(われわれはどこにいくのか)
が描かれていたり、タヒチの創造神タアロアが描かれています。
ゴーギャンはこの作品を、かなり精神的に追い詰められて描いたのですが、この『我々はどこから来たのか,我々は何者か,我々はどこへ行くのか』という問いかけは、ゴーギャンに限らず、誰でも考えたことのある人間の根源を問いかける『テーマ』ではないでしょうか?
自然科学とは?
さて、この絵はゴーギャンの大作として知られていますが、実はこの絵はしばしば自然科学の本にも顔を出すのです。何故、ゴーギャンのアート作品が自然科学の本に出てくるのでしょうか?
ここに自然科学と芸術の深い結びつきが隠されているのです。実は
自然科学とは、『我々はどこから来たのか、われわれは何者か、我々はどこに行こうとしているのか』を明らかにする学問
ともいえるのです。
まず、『我々はどこから来たのか』という想いは『私たちの宇宙や人類の誕生の歴史を知りたい』という人類共通の想いととてもよく似ています。つまり、『宇宙や人類誕生の歴史を知ること』は『我々はどこからきたのか』という想いに答えることになるのです。
同じように、『我々は何者か』という想いは、『私たちのこの世界とはいったい何なのかについて知りたい』という想いと似ています。この世界の仕組みが分かれば、『我々は何者か』ということを知りたいという想いに答えることができるのですから。
また、私たちは未来についても知りたいという感情を抑えることはできません。『我々はどこへ行こうとしているのか』を知りたいという想いは、まさにそういった感情でしょう。つ� ��り、『宇宙や人類は将来どうなるのか』を知ることが、『我々はどこへ行こうとしているのか』を知ることになるのです。
かつてこれらの問いかけには神話などが答えていました。聖書には『創世記』がありますし、この世界の未来については同じ聖書にヨハネの黙示録という予言書があります。そして最近になって、これらの問いかけに自然科学の言葉で答えることができるようになったのです。
自然科学を知ることは、科学の言葉で、『我々はどこから来たのか、われわれは何者か、我々はどこに行こうとしているのか』を知ることなのです。
なぜあなたは科学のダイアグラムを行うときに陰影ませんか?
神話の世界の創世記
聖書の創世記
さて、それでは神話の世界でこの世界はどのように作られたのでしょう?ちょっと簡単に調べてみましょう。
『旧約聖書』には、天と地がどのように作られたが説明されています。
初めに、神は天地を創造された。
地は混沌であって、闇が深淵の面にあり、神の霊が水の面を動いていた。
神は言われた。「光あれ。」こうして、光があった
神は光を見て、良しとされた。神は光と闇を分け、
光を昼と呼び、闇を夜と呼ばれた。夕べがあり、朝があった。第一の日である。神は言われた。「水の中に大空あれ。水と水を分けよ。
神は大空を造り、大空の下と大空の上に水を分けさせられた。そのようになった。
神は大空を天と呼ばれた。夕べがあり、朝があった。第二の日である。旧約聖書 創世記より
旧約聖書によれば、このようにして天地が作られています。このようにして7日間(1週間)、天地が創造されます。興味ある方は創世記の残りの部分の聖書を読んでみるといいでしょう。
自然科学者と天地創造の神話
自然科学者によってよく取り上げられる天地創造はこの聖書ではなく、北欧の『新エッダ』です。たとえばインフレーション宇宙論を提唱した日本の佐藤勝彦教授の『宇宙96%の謎』の中にはこの『新エッダ』の紹介があります。
『ときがはじまったときには、何もなかった。砂も海も、また冷たい波もなかった。地は見当たらず、上に空もなく、大きな口をあけた裂け目があったが、どこにも草木はなかった』北欧神話 新エッダ
とあります。また、あの有名なノーベル賞受賞物理学者、S.ワインバーグ博士の『宇宙創成はじめの3分間』も、本の1ページは『新エッダ』の天地創造からです。
聖書や新エッダだけでなく、世界中にはこのほかにもたくさんの神話があります。そしてその神話の冒頭にしばしば『天地創造』の話が来るのです。
世界中の民族が、この世界の始まりに想いを馳せているのです。これは、私たちが太古の昔から『私たちはどこから来たのか、私たちは何者か、私たちはどこへ行こうとしているのか』という想いが強かったことの証拠ではないでしょうか?
そして現在、天地創造は科学の言葉で明らかになってきています。神話の時代から問いかけられてきた『私たちはどこから来たのか、私たちは何者か、私たちはどこ� ��行こうとしているのか』という問いかけに、私たちは科学を学ぶことによって答えに近づくことができるのです。
このこコーナーではこれからどんどんその答えを説明していきます。
SFアニメ・マンガと物理学
日本に人型ロボットが多いわけ--鉄腕アトム--
僕の大学には『マンガ学科』とか『アニメーション学科』があります。日本のマンガ、アニメは今世界を席巻していますが、当然のことながら日本人にも大きな影響を与えてきました。そのなかの一つのエピソードを紹介します。
鉄腕アトム
チーターダイジェストは、どのように?
日本マンガ・アニメ界の歴史的名作に『鉄腕アトム』があります。これは手塚治虫の代表的SF作品で、人型ロボット『アトム』が大活躍する物語です。アトムには『7つの力』があって(1963年版)、Wikipediaによればその力とは
1. どんな計算も1秒でできる電子頭脳。
2. 60か国語を話せる人工声帯。
3. 普通の1000倍も聞こえる耳。2000万ヘルツの超音波を聞き取ることも出来る。
4. サーチライトの目。
5. 10万馬力の原子力モーター。
6. 足のジェットエンジン。
7. お尻からマシンガン。1秒間に500発撃てる。
だそうです。アトムのオープニソングにも
『心ただしい ラララ科学の子 ♪ 7つの威力さ 鉄腕アトームー♪』
という歌詞がありました。子供のころテレビで流れてました。
さて、この『鉄腕アトム』、日本のある産業界に大きな影響を与えました。その産業界とは『ロボット』です。日本では人型ロボットが結構ありますが、海外のロボットは、『人型』でない場合が多いのです。そりゃそうです、『二本足で移動するロボット』なんて単に歩かせるだけでも大変です。人型でなく、車輪とかレールとか使って動かしたりした方がはるかに楽で正確です。
鉄腕アトムと日本の人型ロボット、そして松岡修造さんとエースをねらえ
それではなぜ日本でこういう面倒な『人型ロボット』が多いかというと、子供時代に『鉄腕アトム』を見た人が大人になって『人型ロボット』を作っているというエピソードがあります。確かに昔はアトム以外にもマジンガーZとかガンダムとか人型ロボットがたくさんありました。こういうアニメ、マンガは人間に大きな影響を与え続けるのです。
人間に大きな影響を与えたマンガの例として、エピソードをもう一つ。あのウィンブルドンベスト8進出した松岡修造さんは、有名なマンガ、『エースをねらえ!』に憧れてテニスを始め、海外遠征でも全巻を持ち歩いたそうです(Wikipediaより)
マンガの人間に与える影響はかくも大きいのです。
銀河鉄道999と科学の関係
わが青春の銀河鉄道999
日本SFアニメの最高傑作は何と言っても『銀河鉄道999』でしょう。『銀河鉄道にのって大宇宙を旅する』。
男のロマンです。いや、人類共通のロマンです。
この作品は映画版のオープニングのシーン、そして鉄郎とメーテルが銀河鉄道999に乗り込んで地球を旅立つシーン、そして最後の鉄郎とメーテルの別れのエンディングシーンは特に感動もので、おそらく100回はDVDで見たと思います。DVDが汚れてきたので、今度はブルーレイ版を買う予定です。
と書きながらアマゾンのページを見ていたら、
使用されるバッキーボールは何ですか?
鉄郎とメーテルが別れるラストシーンは、今でも伝説の感動シーンとして語り継がれている。そして特筆すべきは、当時人気絶頂だったゴダイゴによる主題歌。多くの観客が涙したラストシーンで流れたその曲は、オリコンシングルチャート最高位2位を記録し、アルバム「交響詩 銀河鉄道999」は、オリコンアルバムチャートで1位を獲得という快挙をなしとげた。 アマゾン 銀河鉄道999Blu-ray discのページより
と書いてありました。なあんだ。やっぱりみんな同じこと感じてるんですね。
銀河鉄道999に影響を与えた本
さて、この銀河鉄道999の作者の松本零士先生、他にも『宇宙戦艦ヤマト』など、歴史的大作を作っています。松本零士先生の作品には、たくさんのSF用語が出てきます。アンドロメダとか冥王星とかにはじまり、宇宙を光速よりも速く旅するワープ航法、そしてエヴァンゲリオンなんかにも出てくる反物質(エヴァでは反物質の一例である陽電子)とか色々です。
このようなSF用語、どのようにして松本零士氏は学んだのでしょう。僕の手元に今『復刻版、大宇宙の旅 荒木俊馬』という本があります。ここに、『松本零士宇宙の原点となった天文入門書の決定版!』『この本に巡り合えなかったら確実に自分の歩む道は違ったものになっていただろう 松本零士』とあります。つまり、松本零士氏は一般向け天文書からそ ういうアイデアを得ていたのです。他にも『相対論的宇宙論』というブルーバックスからも色々なアイデアを得たといわれています。ちなみにこの『相対論的宇宙論』の本の挿絵は、最新版ではその松本零士氏自身が描いています。
SFはどれくらい科学的?
このように、一般向け科学書からSFの様々なアイデアが得られるのです。ここで注意することがあります。それは、科学からSFのアイデアを得るにあたって、
『完全に科学に忠実である必要はない』
ということです。たとえば宇宙戦艦ヤマトにおいて、
『放射能汚染した地球を救うタイムリミットがあとわずか1年という限られた時間の中で、14万8千光年離れたイスカンダルにわずか1艦の宇宙戦艦で行きたくさんの敵と戦い、すべての戦闘にたった1艦で勝ち、イスカンダル星で放射能除去装置の設計図を得て帰ってきて放射能汚染された地球を救うことが本当に科学的に可能か』
なんてことをまじめに科学的に考える人はまずいないでしょう。
SF作品においては、主となるものは『� �学』でなく『作品』です。僕は、科学的事実に忠実になりすぎて、作品として全然面白くない著名作家の作品を色々見てきました。あの有名なSF作品を作った作家がなんでこんなつまらないSF作品書いてるの?なんてのもありました。科学に忠実になるのは『科学』でやればいいわけです。SF作品では『科学を作品のネタ』としてとらえ、色々アレンジする必要があるわけです。そのアレンジの仕方に関して、松本零士氏はすばらしい才能を持っています。
トップをねらえ!
先ほどエヴァンゲリオンの話をしましたが、庵野秀明監督作品の『トップをねらえ!』では、かなり科学ネタが出てきます。特殊相対性理論とかも出てきます。科学をたくさん作品に取り込んでいます。この思想は代表作『エヴァンゲリオン』にも受け継がれています。たとえば『ディラックの海』とか『陽電子』とか。。。庵野秀明監督は科学以外にも哲学、キリスト教、心理学など様々な学問をうまく自分流にアレンジして取り込んでいるのです。
タイムトラベル理論は小説家の話がヒントになって生まれた!
さて、松本零士氏が科学書から大きな影響を受けたことを紹介しましたが、今度は逆に『科学が作家から影響を受けたエピソード』を紹介しましょう。
皆さんはどこかで『タイムトラベル』理論というものを聞いたことがあるでしょう。
『時間旅行』。
なんとも素敵な響きですね。このタイムトラベル理論、もちろん普通の物理学者が学会で発表しようものなら、または大学の紀要に書こうものなら、
『あいつはとうとう頭がおかしくなった』
と思われるでしょう。しかし、大物が書くと違うんです。大物物理学者、キップ・ソーン博士は
『ワームホールを用いたタイムトラベル理論』
を発表します。大物になると『自分がマッド・サイエンティストとして扱われるんじゃないか』という リスクはあまり感じなくなるのでしょうか?僕だったら無理ですね。すごい勇気です。
さて、この理論が生まれたエピソードにこんな話があります。作家、カール・セーガン氏が『コンタクト』という小説を執筆中に『26光年離れた恒星に1時間で到達するための方法』についてソーン博士に意見を求めたそうです。その手段としてソーン博士はワームホールを提案して、そこからタイムトラベル理論が生まれたそうです。
つまり、『小説家が科学者に影響を与えてワームホール・タイムトラベル理論が生まれた』のです。『鉄腕アトム』が人型ロボットを作りたいと願うたくさんの大人たちを生み出し、『エースをねらえ!』が松岡修造のテニス人生を生み出したように、『カールセーガン氏の小説コンタクト』が『ワーム� �ール・タイムトラベル理論』を生み出したのです。
マンガ、アニメ、小説のチカラってすごいですね。
次回(予定)
次回は『銀河鉄道の夜』の物理--南十字星を『銀河鉄道の夜』から学ぶ--(6/13予定)です。お楽しみに!
その他リンク
- ヤマト1
- ヤマト企画書
- 銀河鉄道999
参考文献
1)Newton 時間とは何か?タイムトラベルは可能か? 2004.10 ニュートンプレス
2)日本科学未来館
3)旧約聖書
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